浮世絵 東都宮戸川之図/東都名所 佃島
東都宮戸川之図
宮戸川は隅田川の異称のひとつ。川で鰻を獲る人物を描いた作品です。川や雲など自然の描写がとても表情豊かで、特に雲は版を重ねることで表現された量感や立体感までが版画ならではの造形的な仕立てとなっています。まるで模様のような雲が並ぶ空の表現は国芳独自のクリエイティブな描写といえるでしょう。中景の青色のグラデーションなど、色彩も自由自在に操られ、光に揺らめくような表現も美しい作品です。
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東都名所 佃島
隅田川にかかる橋、永代橋から佃島を臨む風景。前景に橋脚の間を通る船を描き、水平線上に小さく描かれた佃島と中景の帆船(はんせん)でつなぐという西洋的な遠近法が用いられており、臨場感溢れる作品です。船に乗る女性たちが見上げるのは、水死者の霊を弔う「川施餓鬼」の札が降ってくる様子。さらに川には桶や食べかけのスイカが流れてきていて、江戸の人々の生活感が表されている国芳らしい描写を楽しむことができます。
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東都名所・両国の涼
両国の納涼花火の様子を描いた作品。この風景からは、まさに江戸の人々の生活を覗き見ることができます。見物の船に乗る人々と物売りとのやりとりや、大山詣(職人たちが巨大な木太刀を江戸から担いで運び、滝で身を清めてから奉納と山頂を目指す庶民参拝)の出発前に川で身を清める者たちも花火を楽しんでいる様子などを、賑やかに描いています。